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幼馴染と刺繍をこよなく愛する魔法使い。

羽守藤乃(IC:梓乃絵師)

Author:羽守藤乃(IC:梓乃絵師)


ブログ内に掲載される作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』及び『サイキックハーツ』の世界観を元に、株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
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烙印

 自宅へは夏期講習の合宿があると告げ、倶楽部の離れに引き篭もった。





 覚悟はしていた。
 けれどそれは、依頼そのものへの覚悟ではなかったと、学園に辿り着いてから呆然と噛み締める。

 止めると心に決めて、貫き通す為に蓋をしていたもの。

 がたがたと震える身体。
 寒さで震えているのではない。まして、怪我の痛みであろうはずもない。
 心臓から染み出すような恐怖 ―― 身体中に張り付くような、血臭。
 現場を見た訳でもないのに、こびりついて剥がれないその臭いに、全身を掻き毟りたい衝動にかられる。
 肌に爪を立て、震えと衝動を堪えるけれど。

 三百という数字の途方も無さに、世界が揺れる。

 唇から零れそうな悲鳴も謝罪も必死で飲み込む。
 見捨てた己に、そんな権利は無い。
 分かっている。受け止めて背負わなければいけないものだと。
 けれど。

 私は ―― 人殺しだ。

 事実の重さに、潰れそうになる。
 歯の根が合わぬ音がガチガチと響く。呼吸は引き攣れたように細く苦しい。目の裏に光が乱舞して刺さる。
 そして、胃の腑から迫り上がってくるものを堪えきれない、と思ったその時。
 携帯の着信音が暗闇を裂いた。
 動けず、じっと音が鳴り終わるのを待つ。
 数度の繰り返しの後に途切れた音は、間違えようもなく。何よりも大切な幼馴染からのメールだ。
 ぽぅ、と。
 画面を開いて浮かぶ光の暖かさに、束の間、見惚れる。文面を追えば、縋り付きたくなるような優しさが詰まっていて、僅かに震えが止まった気がした。
 すぐに返信を打ちかけて、はたり、と手が止まる。
 画面に映る文字の羅列は、堪えきれず弱り切った声。

 何を、馬鹿なことを。

 慌てて打ち消しては書き直す。
 何度書き直しても、ただただ零れる弱音に一度は携帯を閉じたものの、返信をしない訳にはいかない。
 侭ならぬ呼吸を無理矢理に落ち着けて、ごく短い一文を打ち込む。
 その一文を、慎重に読み返す。
 何度も何度も。
 痺れた思考で漸う大丈夫だと判断を下して、そっと送信ボタンを押した。

 弱音など。
 救済を求めるなど。
 決して自分に許してはなるまい。
 誰が許してくれたとしても、自分だけは。

 どうやって贖えばいいのか、分からない。
 贖えるとも思えない。

 それでも。
 怪我が癒えれば、日常に帰る。
 帰らねばならない。

 変わらぬと誓った、日常に。

 笑って。

 帰るのだ。









 くく、と。
 虚ろに嗤い声が溶けた気がした。
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